スナップアップ投資顧問のM&Aの歴史に関するデータ集

米メディア業界では、娯楽・映画大手のウォルト・ディズニーが1995年7月31日にキャピタル・シティーズABC買収を発表したばかりだった。ゼネラル・エレクトリック(GE)傘下のNBCを加えた3大地方波放送局のうち、2社が2日連続で買収されることになった。米メディア業界再編が一気に加速した。

ウエスチングハウスは1991年12月期から3年連続で純損失を計上。1994年に黒字転換した。防衛予算削減で最大部門の防衛電子機器の成長が見込めないうえ、重電部門も伸び悩み、新たな収益源構築を迫られていた。

地方テレビ5局を保有

ウエスチングハウスは地方テレビ5局を保有するなど、すでに放送事業を展開していた。CBS買収前の1994年は、売上高(88億4800万ドル)の約10%を放送事業が占めた。

成長力・収益力の高い放送事業を経営の柱とするためCBS買収を決めた。CBS買収後の合計売上高は約125億ドルで、うち放送事業は36%を占める最大部門となる。

WHの重電事業のライバル、ゼネラル・エレクトリック(GE)も3大ネットのNBCを傘下に持っていた。WHとGEが放送事業でも激突することになった。

だがWHとGEの両社の狙いは決定的に異なる。GEがNBCを単なる一部門と位置付けており売却の可能性があるのに対し、WHは本物の放送会社に変身しようという戦略を掲げていた。

発電設備・電子部品メーカー

ウエスティングハウスは、発電設備や電子部品メーカーとしてのイメージが強かった。だが、5つのテレビ局に加えて、ラジオ局、番組製作会社も所有していた。メディア部門は稼ぎ頭だった。CBSのネットワークを手に入れて、さらに規模拡大をはかろうというのが買収の狙いだった。

加えて、米議会を中心にテレビやラジオ局の所有をめぐる規制緩和の議論が進んでいることも、買収への追い風になった。合併後の「ウエスチングハウスCBS」は、200を超える系列テレビ局と585の系列ラジオ網を持つ巨大放送網となった。

米国で初めてラジオの商業放送

ウエスチングハウスのジョーダン会長はニューヨーク市内での記者会見で、「ウエスチングハウスは米国で初めてラジオの商業放送の認可を受けた企業」と述べた。いかにメディアとかかわりが深いかを力説した。

米3大ネットワークを巡るM&A(1980年代~1990年代)

<米3大ネットワークを巡るM&A(1980年代~1990年代)>
放送局 買収した会社(年) 買収額
ABC ウォルト・ディズニー(1995年) 190億ドル
CBS ウエスチングハウス(1995年) 54億ドル
NBC ゼネラル・エレクトリック(1986年) 64億ドル